文化庁「分かり合うための言語コミュニケーション」報告書を読む

分かり合うための言語コミュニケーション

文化庁が平成28年度から文化審議会国語分科会において検討をすすめていた「コミュニケーションの在り方」及び「言葉遣い」についてです。

文化庁が検討をし、その結果をまとめた「分かり合うための言語コミュニケーション」(平成30年3月)について解説します。

●なぜこの報告書を取り上げるか

価値観が多様化している現代において、共通の基盤が見つけにくくなるのは社会全体の課題でもあり、それは治療院・サロンでの接客にも当てはまります。

施術者と顧客も人と人です。

それぞれの異なりを踏まえた上で、情報や考え、気持ちを伝え合うことで共通理解を深めていく。

そのために必要なことを文化庁が検討し整理した報告書を理解することは価値があると考えました。

●言語コミュニケーション4つの要素

  1. 正確さ
  2. わかりやすさ
  3. ふさわしさ
  4. 敬意と親しさ

この4つの要素を意識し、目的に応じて優先順位を調整する必要があります。

つまり、この4つには対立する要素でもあるからです。

治療家同士の会話では専門用語を使ったコミュニケーションの方が、正確さを担保しやすいですが、治療家と顧客のコミュニケーションにおいては専門用語を使うことでわかりにくい情報になってしまいます。

報告書では以下のように表現しています。

伝え合いの目的、相手、場面や状況によって、どの要素を優先し、あるいは控えるのか、バランスをうまく取りながら、情報や互いの考え、気持ちなどをやり取りすることが、分かり合うための言語コミュニケーションを実現していく上でのヒントとなる。
出典:「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」文化庁

繰り返しになりますが、4つの要素をバランスよく調整していく必要があるということですね。

それでは4つの要素をひとつずつみていきましょう。

●1.正確さ

「正確さ」に留意するとは、互いにとって必要な内容を誤りなくかつ過不足なく伝え合うことである。コミュニケーションの目的が達成されるよう、互いにやり取りする情報、考え、気持ちなどを意図するとおりに、誤解なく伝え合うために必要な要素を指す。

正確さの観点例

  1. 意図したことを誤りなく伝える言葉を用いているか
  2. ルール(一般的な使い方)にのっとって言葉を使っているか
  3. 誤解を避けるよう努めているか
  4. 情報に誤りがないか
  5. 情報は目的に対して必要かつ十分か

「3.誤解をさけるように」は遠慮や気の使い過ぎによって誤解が生じる可能性があることを述べています。

また「4.情報に誤りがないか」は事実と意見を区別できているか。
推論や推測に際しては裏付けの有無を明示していますね。

●2.わかりやすさ

「分かりやすさ」に留意するとは、互いが十分に内容を理解できるように、表現を工夫して伝え合うことである。やり取りする情報、考え、気持ちなどを、言い換えたりたとえを使ったりして相手と歩み寄りながら伝え合い、お互いを理解するために必要な要素を指す。

わかりやすさの観点例

  1. 相手が理解できる言葉を互いに使っているか
  2. 情報が整理されているか
  3. 構成が考えられているか
  4. 互いの知識や理解力を知ろうとしているか
  5. 聞いたり読んだりしやすい情報になっているか

「1.相手が理解できる言葉」は具体例や比喩を使うこと。

「3.構成」は最初に主題や結論を述べることでわかりやすくなりますね。

「4.互いの知識や理解力を知ろう」は質問や相づちをすることで相手への関心や理解を示すことができます。

●3.ふさわしさ

「ふさわしさ」に留意するとは、目的、場面や状況と調和するように、また、相手の気持ちに配慮した言い方を工夫しながら、適切な手段・媒体を通じて伝え合うことである。やり取りする内容に関して、互いにとってふさわしい話題や言葉を選んでコミュニケーションを成功させるために必要な要素を指す。

ふさわしさの観点例

  1. 互いの気持ちに配慮した伝え方を考えているか
  2. 目的に調和した、感じの良い伝え合いになっているか
  3. 場面や状況に合った言葉や言葉遣いになっているか
  4. 相手や内容、目的に合った手段・媒体を使っているか
  5. 互いの言葉や言葉遣いに対して寛容であるか

「1.気持ちに配慮した伝え方」は相手に配慮しながらも自分の考えや気持ちをきちんと伝える点。

「2.目的に調和した、感じの良い伝え合い」は型にはまった考え方、偏った見方を相手に押し付けていないか気を配る点が大切としています。

●4.敬意と親しさ

「敬意と親しさ」に留意するとは、伝え合う者同士が近づき過ぎず、遠ざかり過ぎず、互いに心地良い距離をとりながら伝え合うことである。相手との関係を踏まえて示す敬意と親しさのバランスを、心地良く保つために必要な要素を指す。

敬意と親しさの観点例

  1. 伝え合う相手との関係を考えているか
  2. 敬意をうまく伝え合っているか
  3. 親しさをうまく伝え合っているか
  4. 互いに遠ざかり過ぎたり近づき過ぎたりしていないか
  5. 用いる言葉が相手との関係や距離に影響することを意識しているか

「1.伝え合う相手との関係」はお互いの立場や役割、年代などを意識しているかどうか。

「4.互いに遠ざかり過ぎたり〜」は個人的な領域、内面に不用意に立ち入らないことが大切であると伝えています。

●まとめ

報告書でも伝えていますがコミュニケーションに上手くいく方程式や正解はありません。

むしろ、異なる存在同士のコミュニケーションにおいてはうまくいかないこともよくあることです。

コミュニケーションを重ねていくにあたり、方程式や正解がないことを分かった上で、分かり合うためのより良い方法を探り続けることが大切なですね。

コミュニケーションのあり方について、この記事があらためて振り返るきっかけになれば幸いです。

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