治療院・サロン経営のヒントや新しい視点など気づきがうまれるような本を選抜して紹介するシリーズ第2弾です。
今回選んだ本は『ジョブ理論』
それでは3つのポイントに絞ってお話しますね。
●ジョブ理論

著者はイノベーション論で有名なクリステンセン教授。
「イノベーションのジレンマ」とあわせてのこの「ジョブ理論」も有名な本なので、ご覧になった方も多いかもしれませんね。
20世紀型のいわゆるセグメンテーションマーケティングとは一線を画す思考方法をみていきましょう。
●point1 顧客の片付けたいジョブに注目する
「30代男性、会社員、3人家族」と「40代男性、個人事業主、一人暮らし」といったセグメントをわけてマーケティングをしていく考え方があります。
上記の例のような「30代男性」と「40代男性」では、本当に別々のニーズやペインを持っているのでしょうか。
言い方を変えれば「30代男性、会社員、3人家族」は、みな同じニーズを抱えているのでしょうか。
ジョブ理論ではこれらにNoを突きつけます。
「30代男性」はもちろん、同一人物であっても「状況」により異なるという視点です。
▼ジョブ理論の定義
ジョブ理論は、顧客には「片付けるべきジョブ」があり、そのジョブを解決するために商品を「雇用」すると考えます。
問うべきことは「顧客はどんなジョブ(用事・仕事)を片付けたくて、あなたのサービス(治療院・サロン)を雇用するのか?」です。
たとえば顧客が「ある雑誌を買った」のは、病院の長く退屈な待ち時間をつぶすためかもしれません。
通勤前に「スタバでコーヒーを買った」のは、職場でかっこいいと思われたいからかもしれません。
ジョブ理論では「何をしたのか」ではなく「なぜしたのか」に注目します。
先ほど、”同一人物であっても「状況」により異なる”と記載した点もこの「なぜしたのか」に注目すると腑に落ちます。
つまり、同じヤマダタロウさんでも「平日の通勤前にコーヒーを買うこと」と「休日にコーヒーを買うこと」では「なぜ」が異なりますよね。
前者はシャキッと目を覚ますため、後者はゆったりとリラックスするためかもしれません。
●point2 無消費との競争
ジョブ理論はなぜに注目します。
ある特定の状況で、顧客が成し遂げたいと思っていることを理解することからスタートします。
顧客はリラックスするために、リラクゼーションサロンへ行くことを雇用したとします。
従来の「何をした」に注目すると、このリラクゼーションサロンのライバルは、別のリフレクソロジーサロンかもしれません。
しかし「なぜ」に注目すると、競合の考え方は変わります。
顧客はリラックスするために リラクゼーションサロンではなく、「映画をみる」「ワインバーへいく」「Youtubeをみる」でも良かったのかもしれないという視点があらわれます。
競合が拡大し不安を覚えると同時に可能性が広がる視点にもなります。
なぜを問うことで、真の競合が見えてくるからです。
さらに発展させて考えると「現在、あなたの治療院・サロンに行っていないのは誰か?」「なぜ彼らはあなたの治療院・サロンにいっていないのか?」
と思考することができます。
顧客のジョブを片付けられるサービスを見つけられず、何も雇用しないことを選んでいるのはなぜか。
クリステンセン教授の言葉を借りれば「無消費」です。この状態は何も雇用していない状況です。
このゾーンには目に見えない需要が眠っているのです。
●point3 克服すべき障害物
「ある顧客はなぜ何も雇用していないのか」または「ジョブを片付けるためになぜ他店を雇用しているのか」
ここで問うべきことは、克服すべき障害物です。
この無消費、または他店を雇用している顧客が、あなたの治療院やサロンを雇用するために障害となっているものは何か。
何を取り除かないといけないのかを考えます。
単純に機能面だけではかるのではなく、社会面や感情面からも考察します。
機能面で阻んでいるものなにか。予約が取りにくい、家から遠く通いにくい、どんなカイゼンが見込まれるのかわからないなどがあげられます。
社会面や感情面でいえば、どんな店なのかどんな人が施術してくれるのかわからず不安、情報が少なくどこにあるかわからない。清潔感がない(と感じる)といった側面が障害物となっているかもしれません。
●まとめ
ジョブ理論では顧客の属性ではなく、状況に注目して「なぜ」と問いかけます。
顧客はどんなジョブを片付けたくて、あなたの治療院・サロンを雇用するのか。
逆にあなたの治療院・サロンをなぜ雇用しないのか。そこにはどんな障害物があるのか。
何も雇用しない無消費なのはなぜか。この無消費には多くのチャンスが眠っていると言います。
新しい視点を生んでくれるクリステンセン教授の『ジョブ理論』の紹介でした。